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初心忘るべからず 技能講習は難しくない!- 散弾銃 –

1334112409562_sp_ginou_01 文:竹村吉史
写真:佐久間清人
取材協力:
全日本指定射撃場協会/吉田銃器/須山クレー射撃場

 

Vol.01 初心忘るべからず 技能講習は難しくない!- 散弾銃 – 
後を絶たない猟銃による不慮の事故は、ヒヤリとしたものまで含めるとかなりの件数に上ると言われている。これら事故を未然に防止するための方策として生まれたのが、平成24年12月から本格実施される技能講習。既に銃業界内では周知されている必須講習だが、噂が先走り、難講習として知れ渡っているのが事実だ。

実際に技能講習は難しいのだろうか? それを解明すべく技能講習の実施要領に従い、減点ポイントなど注意点をまとめてみた。
技能講習とは、猟銃による事故原因を基本的操作方法の不徹底と射撃技能の低下と捉え、警察庁が推し進める事故防止のための講習であり、狩猟、有害鳥獣駆除、標的射撃のための猟銃所持者には、銃種ごとに原則として3年に一度の受講が義務づけられた技能講習である。本格実施となる平成24年12月からは、所持許可更新時に受講していなければならないので要注意だ。

技能講習は操作講習と射撃講習で構成されており、操作講習は-20点未満までが合格となる減点方式、射撃講習はトラップ射撃25発中2枚以上、スキート射撃25発中3枚以上的中で合否判定が行われる。操作講習における良否は所持許可取得時の射撃教本に乗っ取って行われる。つまり競技規則ではなく、あくまでも猟銃の所持をするために公安委員会によって定められた基本形が最優先となっているのだ。まさに初心忘るべからずである。

猟銃取扱いの基本を忘れないよう

◎猟銃を手にした場合また射台を離れる場合には、必ず実包が装填されていないことを確認すること
猟銃を持つ時、射台を離れる毎に必ず脱包確認をすること。脱包のタイミングは、クレー射撃競技ルールと異なり、猟銃取扱いの基本に従う。つまり装弾を薬室に残したまま、1番から5番までの各射台を移動することができないので注意を。

◎銃口を人のいる方向に向けないこと
脱包の如何に関わらず、常に心掛けておかなければならない基本中の基本。もちろん点検・分解時も同様のため、日頃から守るようにしたい。

◎射撃する場合以外は、用心がねの中に指を入れないこと
射撃する場合とは、トラップ射撃であれば肩付けを終えたコール直前、スキート射撃は腰骨に銃床を当ててコールする直前である。つまりそれまでの間は用心金の中に指を入れてはならない。入れると減点対象、入れなければ減点の対象にはならないが、判定を下す指導員に分かり易くアピールすることも必要。

◎射撃場では、射台以外の場所で装填しないこと
これも当たり前の事。射台に立って射撃して良いことを確認してから装填する。放出機などのトラブルで、射撃が一時中断された場合は、速やかに脱包をしなくてはならない。

◎銃を手から離す時は、必ず脱包すること
射撃可能になってから装填し、終えたら脱包という流れの中では発生しない事例だが、Wチェックとしての意味合いが強い注意点。とにもかくにも脱包確認をするのが安全であることに変わりない。また銃を手から離す時、あるいは持つときは、薬室内の点検を実施することも重要なポイント。

◎猟銃を携帯し、又は銃架に置くときは、機関部を開放すること
射場内で猟銃を携帯する場合や銃架に預ける時は、脱包を意味する機関部開放をしなくてはならない。元折れ銃なら折った状態、自動銃なら遊底を引き機関部を開放しておく。着脱式弾倉は取り外すが、外すことで機関部が閉鎖する構造の銃なら、機関部にグローブやハンカチなどを挟んで開放をアピールする。

◎銃は倒れたり落ちたりしないよう確実な場所に置くこと
猟銃は、少々離れても監視できる条件が整えば銃架に置くべきで、銃架がなければ倒れたり落ちたりしない安定した場所に置くようにする。もちろん立てて置くのが不安定なら、寝かして置けばよい。

◎銃や実包は、常に自己の管理下に置き、放置しないこと

 

猟銃や実包は監視でき、自分の意のままになる位置に置くこと。置いた場所を忘れてしまうなどは問題外となる。

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技能講習の内容は所持許可取得時の初心者射撃教本に準じており、技能講習独自の考査方法ではない。基本通り忠実に銃を取り扱う事が重要。

 

■操作講習の流れ

○散弾銃の点検・分解結合(1回)

●散弾銃を銃身と機関部に分解し、分解した散弾銃を結合しながら安全点検を行う
注意点
・銃口の向き、操作中に用心がねの中に指を入れない(点検時は除く)
●銃身の点検(組み立て直前に実施。目視で銃腔内の異物の有無、外部の打痕や膨らみ、ひび割れを確認。銃身異常なしと呼称する)
●安全装置の点検(組み立て後に引き金をかけて実施。安全子がスムーズに動くことを確認し、安全装置をかけ引き金を引いた際に撃鉄が落ちないことを確認。安全装置異常なしと呼称)
●引き金の点検(安全装置の点検後に実施。空撃ちをして遊びがあることと重さの狂いが無いことを確認。引き金異常なしと呼称)
●先台の点検(引き金の点検後に実施。元折れ銃は止め金のはめ込み具合、自動銃はキャップの締まり具合を確認。また先台を手のひらで軽く叩き、ガタの有無を感触と音で確認。先台以上なしと呼称)
●接合部の点検(先台の点検後または組み立て後に実施。機関部遊底・銃身の開閉のロック状態を確認。次いで銃床部をひねり、銃床の緩みを確認する。接合部異常なしと呼称)
○散弾銃の保持および携行(1回)
●射台と銃架などの間を散弾銃を携行して往復(銃架などから銃の置きまたは取り動作含む)する
注意点
・元折れ銃は銃身を折り、自動銃は遊底を開き、取り落とすことのないよう確実に保持し、かつ行動や動作を束縛されない方法で携行する。
・操作中に用心がねの中に指を入れない
・銃架に銃を置くときは、実包装填の有無を確認し、元折れ銃は銃身を折り、自動銃は遊底を開けておく。
・銃架に置くとき、実包が装填されていたら脱包する。
・銃架に置くときは、落ちたり倒れたりしないよう確実に置く。
・保持携行する時、銃架に置く時も、銃口は人のいる方向、または人のいるおそれのある方向に向けない。
・銃架から再度銃を手にするときは、実包の装填の有無を確認し、正しい方法で保持携行する。
○照準および空撃ち
●模擬弾にて装填および脱包動作を行う(2回)
注意点
装填後の銃口は、安全な前方空間に向け、銃を確実に保持する。
用心がねに指を入れない。
銃に必要以上の衝撃を与えない。
装填後は銃口の向きに注意し、後方を振り返るなどの行為をしない。
脱包後は実包が装填されていないことを確認し、元折れ銃は銃身を折り、自動銃は遊底を開いておく。
●射撃動作および仮想スイングを行い、空撃ちを実施する(5回)
注意点
用心がねの中に指を入れるタイミングは、射台に入り射撃方向に向かって射撃準備が完了したとき。
●模擬弾にて不発弾発生時の処理を行う(1回)
注意点
遅発を念頭に、10秒前後は肩から銃を外さない。
脱包した不発弾は、自ら確実に保管し、定められた方法によって処理する。

 

 

 

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散弾銃の携行は確実に保持でき、動作を拘束されない方法で行う。もちろん銃口が人のいる方に向いてはいけない。脇に挟む基本方法もある。 銃を手に取るときと離すとき、また各射台間を移動するときは、必ず実包が装填されていないかを確認し、併せて目視で薬室内の点検も実施
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中折れ銃への実包の装填は、基本通り床尾を腹部に当てがい、銃口を前方下部に向け行うこと。薬室閉鎖時は銃身を上に持ち上げて行い、閉鎖後は銃口を水平以上に維持しなくてはならない。 射撃するまでは用心がねの中に指を入れてはならない。周囲に誤解を招かないよう、指を機関部にまっすぐ添えるか、グリップを握ってしまう。

 

■減点対象明細

操作講習は減点加算式で実施され、-20点未満が合格ラインとなる。
-10点
・銃口を人のいる方向に向けた場合
・用心がねの中に指を入れた場合
 ※射撃もしくは空撃ちの場合または引き金の異常の有無を確認する場合を除く
・暴発させた場合
 ※射撃の意思がなく、かつ射撃の必要が無いときに銃から弾が出た場合で、銃器故障やクレーが放出機を出て飛翔を完了するまでの間を除く。
・機関部を開放せず、また弾倉を取り外さないで銃を携帯し、また銃架などに置いた場合
※元折れ銃は銃を折り、それ以外の銃は遊底を開き機関部を開放(弾倉着脱式は弾倉を取り外す)する。ただし射撃および空撃ち時は除く。
・実包を装填したまま射台を外れた場合
 ※実包の装填とは、薬室及び弾倉に実包が入っていることを言う。
・銃の保持方法が確実でないために銃を取り落とした場合
・射台で実包を装填した状態で銃を手から離した場合
・銃を不安定な状態に置いたため銃が倒れたり落ちたりした場合
・銃を手にした場合または射台を離れる場合において、実包が装填されているかどうかの確認を怠った場合
・射台以外の場所で実包を装填した場合
 ※模擬弾を使用して行う操作講習を除く。
-5点
・引き金を引いても撃発しない時、10秒前後そのままの姿勢を崩さず、不発弾であることを確認した上で脱包という一連の動作ができなかった場合
・不発弾を脱包したのち、自ら保管できなかった場合
-3点
・猟銃の分解結合が著しく不正確、かつ円滑でない場合
・実包を自らの眼に届かない所に放置した場合
-1点
・点検時に銃身部の点検確認を怠った場合
・点検時に安全装置の作動の点検確認を怠った場合
・点検時に引き金の点検確認を怠った場合
・点検時に先台が確実に装着されているかの確認を怠った場合
・点検時に銃身部、機関部、銃床部の接合部分の点検確認を怠った場合
・発射の時機を著しく失した場合
 ※クレー放出前やクレーが飛翔を完了した後に発射した場合
・標的の方向と著しく異なる方向に発射した場合
-3〜-1点
・頬付け、肩付けなどの基本姿勢が極端に不正確な場合
 ※操作講習の全ての過程における射撃姿勢を対象とする総合評価とする
以上が主だった注意点だが、それほど恐れることもない。また地域によって運営方法が若干異なることもあり得るが、考査時は会場の指導員が事前に注意点を含めた手本を実施するので、それに従えば問題はないはず。さらに心配な方は、技能講習に向けて、射場技能講習指導員に基本動作などを事前に指導してもらうのも良いだろう。
最後に、技能講習は射撃技能講習指導員が実施するが、あくまでもチェックシートによる採点のみであり、最終合否は公安委員会に委ねられていることは承知しておきたい。